リースバックとは、ご自宅に住み続けながら売却し、まとまった資金を得られる不動産売却方法です。
近年ではリースバックを提供する事業者も増加傾向にありますが、それに伴い、トラブルが増加しているのも事実です。
本記事では、リースバックで起きる可能性のあるトラブルとその回避策を解説いたします。
西 健悟
伊藤忠ハウジング株式会社 取締役 経営管理グループ長
1989年入社。不動産流通部門において法人営業を担当し、事業用不動産仲介を実施。また営業企画部門において首都圏、関西圏のマーケティングを担当し、デベロッパーに対し、新築マンションの市場調査・提案を行う。近年は、リテール仲介の強化を目的に、リノベーション仲介を行うと共に新たな資産活用の方法であるリースバックによる取引を見込み、早くから金融系や不動産系のリースバック会社との連携を強化。郊外の一戸建てから都心タワーマンションまで幅広いリースバックの実績がある。
リースバックの仕組みは売却後の賃貸借
まずは、リースバックの仕組みをおさらいしておきましょう。
リースバックの仕組みはこちらの記事でも詳しく解説しておりますので、よろしければご覧ください。
自宅に住みながら売却できる仕組みは、売却後の賃貸借によるものです。自宅の所有者は、売却後に借主に、買主は貸主になることで、住み続けながらご売却いただけます。
「売却後の賃貸」ということですので、リースバックの仕組みは決して難しいものではありません。
しかし、リースバック物件の買主からすれば元所有者に貸さなければならないという制限があります。制限がある中、それに見合った利益が出ない不動産を購入する買主はいません。
そのため、リースバック契約では買主の利益が確保されるということ。そして住み続けられるとはいえ、所有権はやはり買主に移行すること。この2つの条件によって、次のようなトラブルが発生するリスクがあります。
リースバックのトラブル事例1.リースバックできない
まず1つ目のトラブルは、そもそもリースバックしたくてもできないケースです。
先述通り、リースバック物件は買主からすれば制限が多く、利益を出すことが難しいといえます。
そのため、どんな物件でも買い手がつくとは限りません。一般的な不動産売却にもいえることですが、買主がいてこそ、不動産売却は成立します。買主および貸主になってくれる人や企業が現れなければ、リースバックはできないのです。
回避策
リースバックを提供する事業者は、対応可能な物件の要件を定めています。
たとえば弊社、伊藤忠ハウジングは、基本的に東京・神奈川・千葉・埼玉のエリアの住宅に限定させていただいています。
確実にリースバックをするためには、まず各社のリースバックの対応物件を確認してみましょう。
リースバックのトラブル事例2.売却価格が安い
リースバックによる不動産売却価格は、相場から2~3割程度、安くなるのが一般的です。
やはり相場通りの価格で売却しては、なにかと制限が多いリースバック物件を購入する人や企業は現れません。
しかし、だからといって必要以上に安い価格で取引してしまっては、リースバックの目的が果たされない可能性もあります。
回避策
一般的な不動産売却にも共通することですが、売却価格は買主によって異なります。買主によって、強いエリア、弱いエリアもありますし、戸建が得意な会社、マンションが得意な会社などそれぞれ好みがあります
1社のみで検討するのではなく、価格やサービス内容を各社で比較し、ご自分にとって最適なリースバック会社を選択することが大切です。伊藤忠ハウジングでは、お客様の希望にあったリースバック会社を選定し、ご紹介します。
リースバックのトラブル事例3.家賃が高い
リースバック期間中の賃料は、相場より高くなる傾向にあります。
これもまた、一定程度はリースバックの仕組みによるものですが、必要以上に高い賃料になっていないかは客観的に見定める必要があるでしょう。
回避策
売却価格を比較するのと同様、賃料についても複数社で比較することが大切です。安く売って、高く借りてしまっては、その後のライフプランにも悪影響を及ぼしかねません。
伊藤忠ハウジングでは、お客様のニーズを踏まえ、お客様に代わり、リースバック会社と売却価格・賃料などの条件について交渉します。
リースバックのトラブル事例4.家賃が引き上げられた
一般的な賃貸借にもいえることですが、賃貸借中に賃料が引き上げられることもあります。
引き上げられた賃料が支払えないとなると、引っ越しを余儀なくされる可能性もあります。
回避策
家賃が引き上げられるリスクは、賃貸借契約時にしっかり契約内容を確認することで回避できます。
逆にいえば、口約束だけで「賃料引き上げがない」と合意するのではなく、しっかりその旨を契約書に明記してもらうことが大切です。
リースバックでは、一般的に定期借家契約となり、基本的には契約期間中に家賃が上がることはありません。伊藤忠ハウジングでは、リースバックに関する売買契約に加え、賃貸借契約についてもアドバイスいたします。
リースバックのトラブル事例5.買い戻しできない
リースバックは「売却後の賃貸」という仕組みですが、賃貸後に買い戻すことも可能です。
ただ「可能」ではあっても、これは買主(リースバック会社)次第。買い戻しできるものと思っていたのに、いざ買い戻しをしようとしたらできなかった……ということも少なくありません。
回避策
買い戻されるご意向がある場合には、ご契約前にその旨を買主に伝えておくようにしましょう。
将来的に買い戻していただくためには、ご売却時の契約に特約事項として買い戻しの条件を加える必要があります。
リースバックのトラブル事例6.買い戻し価格が高い
リースバック後の買い戻し価格は、ご売却いただいた価格とイコールではありません。一般的には、ご売却価格の1.1~1.3倍ほどが買い戻していただく価格となります。
ただ買い戻し価格についても、リースバック会社次第。想定以上の価格のため買い戻せないとなれば、その後のライフプランにも影響を与えてしまいかねません。
回避策
将来的に買い戻すご意向がある方は「買い戻すときの価格」についてもご契約前に確認しておくようにしましょう。
売却価格や賃料にも共通することですが、信頼できる企業に任せるということもまたトラブルを避ける回避策となります。
リースバックのトラブル事例7.退去を求められた
リースバック中はご自宅に住み続けられるとはいえ、やはり所有権は買主に移行しますので、永久的に賃貸借契約を継続できるとは限りません。
リースバックにおける賃貸借契約は、期限がある定期借家契約であることが一般的です。期間満了時に更新できると思っていたのに、退去を迫られた……というトラブルも少なくありません。
回避策
賃貸借できる期間についても、ご契約前の確認をしっかりされるようにしましょう。
- 定期借家契約の期間
- 期間満了時の更新の可否
- 更新の要件
売却価格、賃料に加え、上記3つは必ず確認しておきたいポイントです。
リースバックのトラブル事例8.転売された
ご自宅に住み続けられるリースバックですが、所有権は買主に移行します。そのため、貸主となっているリースバック会社が第三者に転売してしまうリスクもゼロではありません。
契約内容によっては、賃貸借や買い戻しの条件が変わってしまうおそれもあります。
回避策
大前提として、勝手に転売するような事業者にリースバックを依頼しないことが大切です。中には、転売して儲けをだすことを目的にする事業者も存在します。
転売されないことが一番ではありますが、第三者に転売されたときのために、あらかじめ「転売の条件」を契約書に明記しておくことも大切です。具体的にいえば、契約期間や賃料、買い戻しの条件を第三者の買主に引き継ぐ旨の記載があると安心できます。
リースバックのトラブル事例9.相続人と揉めた
リースバック会社とのトラブルのみならず、リースバックによって親族間でトラブルが発生する可能性もあります。
リースバックは、豊かなセカンドライフを送るため、あるいは老後資金捻出のために利用される方も多くいらっしゃいます。
しかし、リースバックした家を相続するつもりでいた相続人からすれば、相続資産が減少してしまうことに直結し、相続トラブルとなってしまうおそれがあるのです。
回避策
リースバックでは、推定相続人の同意は不要。所有者の意思さえあれば利用できます。
しかし、リースバック後の相続でトラブルに発展させないようにするためには、あらかじめお子さんなどの推定相続人に伝えておくのが良いでしょう。リースバックは転居が不要なため、事情を知らない人からすれば変わらず所有しているように見えるものです。
リースバックのトラブル事例10.不動産会社が倒産
リースバック会社が「破綻」や「倒産」してしまうリスクはゼロではありません。
破綻や倒産となれば、転売の意図はなくともリースバックしている物件を手放さざるを得ない状況になってしまうこともあります。
回避策
リースバックを依頼する事業者や買主には「安定」や「信頼」も求められます。一般的な不動産売却とは異なり、借りている間もずっと関係性が続くからです。
リースバック事業者や買主が、信頼できるか?リースバック期間中に倒産しないか?という点は、リースバックする前提条件としてしっかり見極めるようにしましょう。
トラブルを回避して安心・安全のリースバックを
リースバックは、資金難にある方や老後資金に不安がある方、豊かなセカンドライフを送りたい方にとって、有効的な不動産活用です。
今回お伝えしたトラブル事例とその回避策を念頭に置いていただいて、安心・安全のリースバックをされてください。
リースバックのトラブル事例やその回避策をもっと聞きたいという方、伊藤忠住宅ハウジングのリースバックについて知リたいという方は、お気軽に問い合わせください。
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